風はなお一層強くなるばかりだった。一同はあやかし園の建物の中へ避難して、暗い中で紅の帰りを待っている。
 木造平家建の建物はガタガタと音を立てて、今にも飛ばされてゆきそうだ。
 所々で子どもの泣く声が上がる。それをなだめる親も皆一様に不安そうな表情だった。
「のぞみ、これは一体…」
 こづえが仕事から帰ってきた。
 そして暗い中で素早くかの子を探し出し、腕に抱いた。
「季節外れの嵐が来たと人間たちが騒いでいたけど、もしかして…」
「ヌエが来てるんだ」
 のぞみの代わりに答えたのはサケ子だった。さっきよりは幾分落ち着きを取り戻したようにも思えるが、顔色はすこぶる悪く、声が少し震えている。
 サケ子の言葉にこづえは息をのんでかの子をぎゅっと抱きしめた。
「…太一が結界から出てしまったんだ。親が付き添っていないあやかしの子は奴にとっては大好物だからね。早速嗅ぎつけて来たんだろう」
 苦々しい表情で言ってサケ子は自分で自分を抱きしめる。そしてこれ以上は言えないというように首を振った。
 のぞみが後を引き継いだ。
「紅さまが助けに行かれました。私たちにはここから離れないようにと…」
 こづえが頷く。
 のぞみはたまらくなって彼女に尋ねた。