灰色の雲がとぐろを巻きごごごと音を立てている空を見上げて、紅がゆっくりと首を振った。
「ならん、ヌエが近くまで来ているようだ。…危険すぎる」
　いつのまにか他のあやかし達が、集まりはじめていた。子どもたちも建物の外に出てサケ子と一緒に事態を見守っている。
　いつもは物事に動じないサケ子が不安そうにしているのが、なお一層のぞみの胸をかき乱した。
「サケ子、子ども達を保育園から出さぬように。皆もこの場から離れるな。…私は太一を探しに行く」
　そう言うと同時に飛び上がり、夜の空に紅は消えた。