「紅さま…」
「のぞみ、あやかし園はヌエから子ども達を守るためにあるようなものなんだ。ヌエはいつも私を狙っていて、私より力をつけようとあやかしの子ども達を食べたがっているからね」
 そう言う紅の瞳からのぞみは目が離せない。こんなに悲しい目をした彼は初めてだった。
 のぞみは紅が志津と夫婦別れした頃にあやかし園を始めたというこづえの話を思い出していた。
「…私は、太一を探しに行く。のぞみは結界から出ぬように。…ヌエは人間には興味はないが、私の妻だと知られたらただでは済まないだろう」
 紅の言葉にのぞみはぶるりと身体を震わせて、それでも意を決して立ち上がった。
「私も連れて行って下さい。一緒に太一君を探します」
「のぞみさま!いけません!」
 志津が青い顔を上げて首を振る。颯太がのぞみの代わりに彼女を抱きしめた。
「太一君は私を探しに行ったのです。私が癇癪を起こしたから…」