「颯太はたった一人の妹が健やかでいることのみを願い、毎日毎日やってきました。そしてそのいなり寿司を食べ続けるうちに、少しずつ私は外へ出られるようになっていったのでございます」
志津の目からぽたりと青い雫が落ちた。
「のぞみさま。私は颯太の、あなたを思う心に救われたのでございます。たった一人の肉親を思い続けてよいのだと…忘れないでよいのだと、颯太の作るいなり寿司がおしえてくれたのでございます」
のぞみの目から新たな涙が溢れて頬を伝った。
のぞみが兄を思うように、兄ものぞみを思っていた。そしてその心が傷ついた志津を癒した。
それでいい。
そんな気持ちが心の底から湧いてきた。
志津の心にはいつも亡くした子がいて、それを抱えたまま彼女は歩き出した。
そして颯太と二人夫婦となり、太一という可愛い可愛い新たな命を授かった。
…それでいい。
のぞみは素手で涙を拭う。そしてゆっくりと立ち上がった。
「志津さん、つらい話を私のためにしてくださって、ありがとうございます。子どもみたいに癇癪を起こしてすみません。兄のしたことにはまだ少し、複雑な気持ちがありますけど、…兄が…兄があなたと出会い太一君が生まれたことは、心からありがたいと思います」
のぞみは保育園の方を見つめて、長い長いため息をついた。
「帰りましょう、彼らのところへ」
志津の目からぽたりと青い雫が落ちた。
「のぞみさま。私は颯太の、あなたを思う心に救われたのでございます。たった一人の肉親を思い続けてよいのだと…忘れないでよいのだと、颯太の作るいなり寿司がおしえてくれたのでございます」
のぞみの目から新たな涙が溢れて頬を伝った。
のぞみが兄を思うように、兄ものぞみを思っていた。そしてその心が傷ついた志津を癒した。
それでいい。
そんな気持ちが心の底から湧いてきた。
志津の心にはいつも亡くした子がいて、それを抱えたまま彼女は歩き出した。
そして颯太と二人夫婦となり、太一という可愛い可愛い新たな命を授かった。
…それでいい。
のぞみは素手で涙を拭う。そしてゆっくりと立ち上がった。
「志津さん、つらい話を私のためにしてくださって、ありがとうございます。子どもみたいに癇癪を起こしてすみません。兄のしたことにはまだ少し、複雑な気持ちがありますけど、…兄が…兄があなたと出会い太一君が生まれたことは、心からありがたいと思います」
のぞみは保育園の方を見つめて、長い長いため息をついた。
「帰りましょう、彼らのところへ」