あやかしたちに、おお!というどよめきが起きた。
「こ、紅さま!」
 のぞみは紅に抱き上げられたまま声をあげる。
「なんだい?のぞみ」
「ここここんなところで、いきなり発表しないで下さい!」
 恥ずかしくて、のぞみは真っ赤になってしまう。大人のあやかしだけではなく子ども達も見てるというのに。
 紅が何がダメなんだというように首を傾げた。
「のぞみははっきりとさせたかったんだろう?お嫁さまではなくて、許嫁だと今言わなくていつ言うの?今日の降園後にでもあやかし大集会を開くかい?私はそれでもいいけれど」
 一平が追放された夜に、あやかしというあやかしがのぞみと紅を見ていたという話を思い出して、のぞみはぶんぶんと首を振った。
 でも考えてみれば、ひっそりと目立たなく紅のお嫁さまになりたいというのぞみの希望は、無理なことなのかもしれない。長(おさ)である紅の婚姻はこの辺りのあやかしにとっては他人事ではないのだから。
 のぞみがどういう存在なのかがはっきりとした今、皆一様に安心した表情で「紅さま、許嫁さま、おめでとうございます」と頭を下げている。
 のぞみに向かって"本当なのか"という視線を送っていた志津も、のぞみが頷いたのを見て安心したように息を吐いて頭を下げた。