「ついに丸め込まれたか…」と言って机に突っ伏した。
 紅がそれをじろりと睨んだ。
「何が、"紅さまは怖い"だ。こづえほど私の悪口をのぞみに吹き込むあやかしはいないというのに。見逃してやってるじゃないか」
 こづえはそれを無視して立ち上がる。そして少し哀れむようにのぞみを見た。
「のぞみ、大丈夫だからね。いい女になるにはいろいろな経験が必要だ。嫌なことがあったらいつでも夫婦別れしていいんだよ。私は夫婦別れの玄人だから、いつでも相談に乗るよ。女は一人が一番さ。でも、おめでとう」
 そう言ってかの子をひと撫ですると、のぞみが何か言う前に消えた。
 唖然とするのぞみの隣で紅が苦々しい表情で舌打ちをした。
「相変わらず、おしゃべりなやつだ」