「へー、キツネが味方になったんだ」
 いつもの時間のぞみ部屋でお茶をすすってこづえが言う。のぞみはこくんと頷いた。
「いい人ですね。志津さん」
 こづえはうーんと首を傾げてから「でも、すごく怖い」と顔をしかめた。
「まぁ、味方になってくれるなら百人力だよ。何しろ紅さまに意見することができるのは志津くらいだろうから」
 のぞみはそういえばと、昨夜のことを思い出した。紅がのぞみを騙したことをすごく怒ってくれていた。
 あんな風に言ってくれたのは彼女だけだった。
「私ものぞみのことは大好きだけど、紅さまは怖い。だからあまり力になってやれなくて申し訳ないと思うんだけど…」
「そ、そんなことないです!いつも話を聞いてもらってとってもありがたいんです!」
 のぞみの言葉にこづえは嬉しそうに微笑んで、隣に座るかの子の頭を撫でた。
「まぁ、何にせよ。これからもしもあんたが本気でアパートを出たくなったとしたら、力になってくれるのは志津だと思う」
 のぞみはこづえの言葉の意味を少しの間考えてから、あ、と声を漏らして頬を染めた。