紅は人間の集まりには極力参加をしないようにしている。
 それは彼が人間を避けているというわけではないらしい。
 紅が行くと彼があやかしだとは知らないおじさん連中から、やれ見合いをしろだの、あそこの娘はどうだだのとからまれるからだ。
 面倒くさいから本当に必要な時だけにするよと日頃はほとんど参加しないという話だった。
 それでも今夜行ったのは、おそらくはのぞみのためだろう。
 しかもそれをあらかじめ言わなかったのは、空振りに終わったときにのぞみをがっかりさせないように配慮してくれたに違いにない。
「紅さま」
 のぞみはふいに泣きそうになって、紅の胸に抱きついた。あやかしは人間よりも情が薄いなんて嘘だと思う。
 紅はいつものぞみを大切にしてくれているじゃないか。
 それからサケ子もこづえも志津も、みんなみんな温かい心でのぞみを包んでくれている。