サケ子とは仕事の合間に子どもたちの話をすることがよくあった。少し冷淡にも思える彼女の意見は、それでもあやかしを知らないのぞみにとっては、子どもたちを理解する上で欠かせない。
 しかも彼女は、いつもどんなときもめんどくさがらずにのぞみの相談に応じてくれる。とても頼りになる先輩だ。
 のぞみはそれを思い出して微笑んだ。
「ふふふ、ここのところ"サケ子先生のぞぞぞ講座"が大人気なんですよ」
「…のぞみの影響だろう?」
 そう言って紅は目を細める。
 のぞみは慌てて首を振った。
「そんな、私は何もしていません。…むしろ失敗ばかりかも…」
 その頭をそっと撫でて紅は山神神社の片隅の古い建物をじっと見つめた。
「のぞみがいてくれれば、あやかし園でも、あやかしの子だけではなくて、人間の子も預かれるような気がするよ。いつか…」
 そうだ、子ども達の間にはあやかしも人間も、強いも弱いもないのだと、今日太一におしえてもらった。
「そうですね、いつかきっと!」
 のぞみはなんだか嬉しくなって弾んだ声を出した。そして少し考えて、もう一言付け加える。
「じゃあ私の子どもが生まれたら預けることにします。人間の子第一号! なんて…きゃっ」