紅がのぞみの頭に口づけを落として、ふぅーと長い息をついた。
「…ねぇ、のぞみ。太一はうまくやったね。あやかしの私たちには、考えつかない解決方法だった。まさか鬼を仲間にしてしまうなんて」
 紅は感じ入ったように言う。太一の頑張りにはのぞみと同様に紅も感心したようだ。
 のぞみはふふふと笑って頷いた。
「本当に。子どもって一人一人が奇跡みたいなものですね。私たち大人ができることなんてほんの少ししかないのかもしれません。それでもそれを側で見られるから、保育園の先生って、とても楽しい仕事です」
 紅が、のぞみを抱く腕にぎゅっと力を込めた。
「のぞみ、さっき志津に言った言葉は、本当だね?騙されたけどここに来これて良かったって…」
 のぞみは街の灯りを眺めながら、こくんと頷いた。
「普通の保育士生活とはちょっと違うような気がしますが、きっと働く喜びは同じように経験させてもらっていると思います。…あやかし園はいい保育園ですよね」
「そうだね。でものぞみが来てから随分と園も変わったんだよ」
「え?…そうですか?」
 少し意外な紅の言葉にのぞみは振り返って彼を見た。
 あやかしの力を使うときにだけ見られる目尻の赤い色が夜の闇に浮かんでいる。初めは怖いと思ったその赤は、いつのまにかのぞみの大好きな色になっている。