少しだけ潮の香りのする風がざざざと大木の葉を揺らす。
その枝にのぞみは紅と二人腰掛けて眼下に広がる街の灯りを眺めている。
「怖くはない?」
紅がのぞみを後ろから抱いて、耳元で囁いた。
ついさっき、仕事終わりのアパートへ続く小道で、少し散歩をしないかと誘われて頷いたはいいけれど、まさか木の上だとは思わなかった。
飛び上がるためにのぞみを抱き上げた紅は、そのまま頑丈な木の枝に腰掛けてものぞみを腕の中から離さない。
いつもよりも遥かに近いその距離にのぞみは頬を真っ赤に染めて首を振った。
「だ、大丈夫です。大丈夫ですから…は、離して下さい」
だが紅はそののぞみのお願いを聞き入れるつもりはないようだった。
「少し風が出てきたからね。身体を冷やすといけないだろう?」
「そ、それはそうですけど…」
確かに風を感じる涼しい夜だ。それでもそれが嘘だと思うくらいにのぞみの身体は火照っている。
その枝にのぞみは紅と二人腰掛けて眼下に広がる街の灯りを眺めている。
「怖くはない?」
紅がのぞみを後ろから抱いて、耳元で囁いた。
ついさっき、仕事終わりのアパートへ続く小道で、少し散歩をしないかと誘われて頷いたはいいけれど、まさか木の上だとは思わなかった。
飛び上がるためにのぞみを抱き上げた紅は、そのまま頑丈な木の枝に腰掛けてものぞみを腕の中から離さない。
いつもよりも遥かに近いその距離にのぞみは頬を真っ赤に染めて首を振った。
「だ、大丈夫です。大丈夫ですから…は、離して下さい」
だが紅はそののぞみのお願いを聞き入れるつもりはないようだった。
「少し風が出てきたからね。身体を冷やすといけないだろう?」
「そ、それはそうですけど…」
確かに風を感じる涼しい夜だ。それでもそれが嘘だと思うくらいにのぞみの身体は火照っている。