「うちの神社の裏でさ、保育園をやってるんだ。かの子はそこでお預かりしている子でね。さっきは母親が恋しくて、敷地内から出てしまったんだよ」
 なるほどそうなのかと納得できる説明ではない。だがそれよりものぞみは"保育園"という言葉に反応した。
「保育園があるんですか?!」
 宮司が頷く。そしてあぁと思いついたように声をあげた。
「そういえば君、保育士さんだっけ。稲荷のおじさんが言ってたな」
「そうなんです!」
 のぞみは少し勢い込んで返事をした。
 働き口があるなら仕事はなんでもいいとは思っていたが、資格を活かせるならその方がいいに決まっている。
 この街にいくつ保育園があるかはわからないけれど、住むところが決まってから一つ一つあたろうと思っていた。それがまさかこんなに近くに見つかるなんて。
「あの、まだ働いているわけではないのです。し、資格があるだけで…。私昨日この街に来たばかりですから、できればこの街の保育園に勤めたいと思っておりまして…」