ひしめき合うように連なる家々、その間を縫うように走る単線の鉄道、先にはキラキラと輝く大海原が広がっている。
 さして大きくはないこの海辺の街に、のぞみは昨日到着したばかりだ。
 住むところも、仕事も決まってはいない。それでもある目的のためにここへやってきた。
「きれい…」
 そう呟いて、のぞみはペットボトルの水をごくごくと飲んだ。
 昨夜のぞみが泊まった駅前のホテルのフロント係は、これから住む所を探すというのぞみに、近くの不動産屋を紹介してくれた。
「君みたいな可愛い子ならサービスしてくれるんじゃないかな」
 だが彼の親戚がやっているというその不動産屋のおじさんは、のぞみの条件を聞くとうーんと唸って眉を下げた。
「ちょっと厳しいなぁ…」