そしてみんなで水場へ行き、きれいになって部屋で手当てをする頃には太一の涙も止まっていた。
「…太一、約束どおり、オイラはお前の子分になるよ」
 六平がむくれ顔のまま太一に言う。
 以前に約束したことを守ろうとしているのだ。あやかしの間で"約束"は絶対だから。だが太一は、少し考えてから首を振った。
「お前みたいな生意気な子分はいらない」
「は!?だってお前!」
「子分はいらない…、子分じゃなくて…」
 少し顔を赤くして、いいよどむ太一の言葉をのぞみはにっこりと笑って、引き継いだ。
「子分じゃなくて、仲間になりたいんだよね」
 太一が真っ赤になって、こくんと頷いた。
 鬼三兄弟は一瞬戸惑うように顔を見合わせる。だがすぐに互いに確認し合うように頷いた。
「わかったよ」
 六平が言ってへへっと笑った。
「せっかくオイラを子分にするチャンスだったのに、太一お前変な奴だな。紅さまの言う通り、人間っておもしろいや」