確かに彼が人間ならば、デリカシーがないといったところだろう。でも彼はあやかしで、しかも天狗なのだ。それを思うと、もっとことは単純なのだという気がした。
 おそらく彼は彼なりにのぞみを大切に思ってくれている。それがのぞみと同じ種類のものかどうかは相変わらずわからないままだけれど、そもそも二人は人間とあやかしなのだから、違って当たり前なのかもしれない。
 いつのまにか紅の手が伸びてのぞみの頭を優しく撫でた。
「よかった…。のぞみは怒っていないようだ。それが一番怖かったんだ」
 頭に触れる紅の手がのぞみを夢の世界へと誘う。のぞみは微笑みながら、ゆっくりと目を閉じた。