鳥居をくぐるまでは確かに宮司にくっついて、眠るように目を閉じていた。
 でも、さっきアパートの前では…。
 あの時すでにいなかったかどうだったか…。頭の中にモヤがかかったみたいに思い出せなかった。
 宮司は、あぁと言って微笑んだ。
「寝ちゃったからね。預けてきたよ」
「預けて…」
 のぞみは呟いて宮司を見つめる。
(…でもいつのまに?)
 覚えている限り宮司とのぞみはずっと一緒にいた。それ以外の人は影すら見なかったように思う。
(それに…いったいどこに?)
 美しすぎるようにも感じる宮司の微笑を見つめるのぞみの背筋をひんやりとしたものがつーと落ちた。
 ふるりと身体を震わせると、彼の目尻がわずかに赤みを帯びて見えた。なぜかはわからないけれど、それ以上は聞いてはいけないそんな気がしてのぞみは口をつぐむ。
 一方で宮司の方はのぞみの疑問などお見通しだというようにくすりと笑って口を開いた。