ぷんぷんと怒りながら、それでも紅は優しい手つきで、のぞみの傷の手当てをしてゆく。
 のぞみは頬を染めて彼を見つめた。
「ごめんなさい。今日は何だか夢中だったから、あまり痛みを感じなかったんです。今になって痛いなぁと思いますけど。…でもそのおかげで、太一君が無理をしてでも鬼ごっこにまざりたがったわけがわかりました」
「わけ?」
 紅がのぞみの足に視線を落としたままで聞き返した。
「はい。とにかくすごく楽しいんです!鬼三兄弟はすごく素早くてスタミナもあってかっこいい。彼らに憧れみたいな気持ちを抱いてるんじゃないかなぁ、太一君」
 のぞみは部屋の電球を見上げてにっこりとした。
「人間の子どもって、子どもが大好きなんです。だからやっぱり太一君の行動は自然なことです。彼の気持ちが伝われば、あやかしの子だってもしかしたら…」
 手当てを終えた紅の手が伸びてきてのぞみの頭を優しく撫でた。
 綺麗な切れ長の目に見つめられてのぞみの身体が少しだけ熱くなった。
「なるほどね、まざってみてわかることもあるようだ。それでもやっぱり無理は禁物だよ。のぞ先生に何かあったら、それこそ子どもたちは悲しむだろう。さぁ、今日は疲れただろう、もうお休み」