今までは外の遊びにのぞみは加わらないというのが子どもたちの間でも当たり前になっていたから、驚きながらも嬉しそうにしてくれているのが可愛らしい。
 のぞみの胸に温かいものが広がった。
「良かった!太一君行こう!」
 のぞみはみんなより少し遅れて縁側で靴を履いている太一に言った。
 園庭で子どもたちがしている遊びは大抵鬼ごっこのようだった。
 メンバーに本当の鬼の子、六平、七平、八平が混ざっているのが可笑しくてのぞみはくすりと笑ったけれど、内容は思ったよりもハードだった。
 まず、のぞみの知っている鬼ごっことはルールが逆だった。
 鬼は、六平七平八平の三人で、彼らが追いかけるのではなく、彼らを皆で追いかけるのだ。
 並外れた素早さとジャンプ力がある彼らを捕まえることは、至難の技だ。しかも、桁外れにスタミナがあるからいつまでたっても終わらない。これを降園時間まで延々と続けるというのだから、開いた口が塞がらないというのはこのことだ。
 それでも単純な遊びほど面白いのかもしれないとのぞみは思う。その日はずっと鬼の子たちの背中を夢中になって追いかけた。
 捕まりそうで捕まらない彼らを挟み撃ちにして、あと一歩で逃したときは一つ目の子ヒトシと太一と共に地団駄を踏んで悔しがった。
 勢い余って、河童の子のための小さな池にのぞみがはまってしまったときは皆、お腹がよじれるまで笑いころげた。
 そして降園時間が近づく頃には、太一とのぞみ、それから鬼を追いかける役の子たちの間にはある連帯感が生まれていた。
「あー楽しかった!でもさすが鬼の子三兄弟、なかなか捕まらないね。悔しいなぁ」