「本当に、のぞみ先生はお優しい」
 だがすぐに、綺麗な眉を寄せて苦しい表情になった。
「太一がご迷惑をおかけしております」
 その一言でのぞみは彼女がわざわざ園に戻ってきた理由を悟る。太一のことで相談があるのだ。
「…やはり、あの子はあやかしの中でもうまくやっていけないようですね」
 志津が白い耳をしょんぼりと折った。
「そ、そんなことはありません!! 太一君毎日保育園でがんばっていますよ」
 のぞみは慌てて首を振った。
 トラブルが続いていることはさておき、彼自身は本当によくがんばっていると思う。
「お友達を作ろうと一生懸命です。慣れない環境で頑張る姿は小さいのにすごいと思います」
 のぞみの言葉に、志津が涙ぐむ。
 のぞみは「ただ…」と言って肩を落とした。
「私自身は、彼の頑張りに対してまだ何もできていません。今さっき紅さまからあやかし同士の関係について聞いたばかりなんです。太一君が頑張っているのに、うまくいかないわけが、よくやくわかったところです。まだ、どうすればいいかまではわかりませんけど…」
 でも必ず何か方法はあるとのぞみは思う。
 志津が悲しげにため息をついた。