さりとて他のあやかしの子に手加減をしてやってくれと言うのは、太一本人が嫌がった。
 結局、園庭での遊びは紅が様子をみることでなんとか落ち着いたが、それで子どもたち同士がうまくいくというものでもないようだった。
 あやかしの子たちが、威勢はいいが腕っぷしの劣る太一をどこか鬱しがったり、馬鹿にしたりするようになったからだ。太一の方もそれに強く反発するので毎日喧嘩が絶えない。しかも仲直りをしないので、日に日に太一と他の子たちとの間に、溝ができてゆくようにのぞみは感じていた。
「あやかしの世界は強い者がえらいんだ。親もそうやっておしえるから、みんな仲良くは無理だろうよ。太一が身の程をわきまえるようになれば、そのうち騒ぎも収まるよ」
 というのがあやかしの先生であるサケ子の意見だった。
 一方でのぞみの方は、それではあまりに太一がかわいそうだと思っていた。
 人間の保育園では強すぎると弾かれてきて、あやかし園では逆に弱くて避けられるなんて。もしかしたら初日に、志津がやたらと心配していたのは、こういうことを予想していたからじゃないかとさえ思った。