のぞみはそう言って、小さくガッツポーズをしてみせる。転園直後が不安なのは子どもだけじゃなく、親も一緒だ。
 友だちはできただろうか、泣いていないかと心配ごとは尽きないだろう。志津にも安心して預けてもらえるようにならなくてはとのぞみは思う。
「頼もしい先生だ」
 紅が言ってくすりと笑った。
 そんなのぞみと紅を交互に見て、少し迷いながら志津が口を開いた。
「前の保育園では、あの子…トラブルばかりだったんです。半分あやかしですから、力も何もかも強いでしょう? 喧嘩になると他の子にけがをさせてしまうことが沢山あって…居づらくなってしまったんです。あの子からしてみたら追い出されたと思っているのかもしれません」
 人間の保育園に居づらくなってここへ来たのなら、人間であるのぞみに対するあの態度も仕方がないのかもしれない。
 あやかしの中で働いているのぞみには彼の気持ちが少しわかるような気がした。