のぞみがかの子と手を繋いで保育園へ行くと、見知らぬ親子が玄関の前に立っていた。
 真っ黒い短髪の髪にぴょこんと白い耳を出してお尻からふさふさとした尻尾が生えている四歳くらいの男の子とその母親と思しき女性だ。
 母親は、切れ長の目と泣きぼくろが色っぽい綺麗なキツネで、紫陽花柄の浴衣を涼しげに着こなしている。
 おそらくついさっき聞いたばかりの新入園児だろう。アパートの方からやってきたのぞみたち三人に気がついて、母親の方が丁寧に頭を下げた。
「紅さま、お久しぶりでございます。ご無沙汰してしまい、申し訳ありませんでした」
「あぁ志津、久しぶり」