この状況で、"嫁だ"と周りに誤解をされて…。のぞみはうーんと唸って頭をぐしゃぐしゃとかいた。
 こづえがため息をついた。
「あんたにまだその気がないのは、私はわかるけど、とにかくもう否定はできないだろうね。どうあがこうが"嫁"だと認識されちまった。紅さまは昔からアパートを出てゆく嫁を止めたりはなさらない。だからあんたが出て行くことはできるだろうが、その場合もかつては"嫁"だったという事実は消せないだろうよ。つまり人間でいうバツイチだ」
「バツイチ!?私まだ二十一歳なのに!!」
 いや年齢の問題ではない。そもそも彼氏だっていたことがないのにと、のぞみはガッカリとして眉を下げた。
 例えあやかしの世界の話しだとはいえ、もうのぞみは半分はこの世界に足を突っ込んでいるのだ。ショックを受けるのは仕方がないだろう。
 そんなことを考えていると「のぞみは、バツイチにはならないよ」という声が聞こえてのぞみは振り返る。紅が扉にもたれて立っていた。
「紅さま」
 紅は駆け寄るかの子を抱き上げて、その頭を撫でた。