「な、なんですか?」
「一平がちょっと手を出そうとしただけであそこまでお怒りになったんだ。あやかしたちがのぞみを"新しい嫁"だと確信するのも無理ないさ」
「そんなぁ…」
のぞみは情けない声を出してしまう。
あの日はとにかく助けだされたことと紅の誤解が解けたダブルの安心感に、身体の力が抜けて彼の膝に抱かれるままになっていた。遠目から何を話しているか聞こえない状態であれを見ていたのだとしたら、あやかしたちが誤解しても無理はないと思う。
それならば尚更毎日、きちんと否定をしなくてはいけなかったのに、紅あの態度では…。
いやそもそも、いったい自分はどういう立ち位置なんだろうとのぞみは思う。彼に対する恋心を自覚したことは確かだが、その想いはいったいどこへ向かうのやら…。
紅の方は、セクハラ解禁と言ったあの夜の言葉どおり前にもまして距離を縮めようとしてくる。それもこれものぞみを気に入っているからだと本人は言うが、それがのぞみと同じ種類の気持ちかどうかは、あやしいと言わざるを得ない。何せ相手はあやかしで、しかもいい加減なことばかり言う天狗なのだから。
「一平がちょっと手を出そうとしただけであそこまでお怒りになったんだ。あやかしたちがのぞみを"新しい嫁"だと確信するのも無理ないさ」
「そんなぁ…」
のぞみは情けない声を出してしまう。
あの日はとにかく助けだされたことと紅の誤解が解けたダブルの安心感に、身体の力が抜けて彼の膝に抱かれるままになっていた。遠目から何を話しているか聞こえない状態であれを見ていたのだとしたら、あやかしたちが誤解しても無理はないと思う。
それならば尚更毎日、きちんと否定をしなくてはいけなかったのに、紅あの態度では…。
いやそもそも、いったい自分はどういう立ち位置なんだろうとのぞみは思う。彼に対する恋心を自覚したことは確かだが、その想いはいったいどこへ向かうのやら…。
紅の方は、セクハラ解禁と言ったあの夜の言葉どおり前にもまして距離を縮めようとしてくる。それもこれものぞみを気に入っているからだと本人は言うが、それがのぞみと同じ種類の気持ちかどうかは、あやしいと言わざるを得ない。何せ相手はあやかしで、しかもいい加減なことばかり言う天狗なのだから。