のぞみは声をあげて絶句した。
「森の木々に隠れてね。それから鬼たちが去ったあとに、紅さまが膝にのぞみを抱いて慰めていらしたところもね」
 のぞみはあんぐりと口を開けた。まさかあれを全部見られていたとは…。
「それまではアパートにいるとはいってものぞみは人間だから、嫁かどうかみんな半信半疑だったんだ。でもあの時、のぞみに手を出そうとした一平に紅さまが制裁を加えたことで、やっぱりそうだったんだとなったのさ」
「ああああれはそうじゃなくて、嫁かどうかは関係なくて…ただ、嫌がる私を無理やり連れて行こうとしたことにお怒りになったんです」
 ショックから抜けきれないままに、のぞみは言い訳をのようなことを口にする。こづえが鼻で笑った。
「それであそこまでお怒りになるかねぇ。そもそも今までだって紅さまの嫁が他のあやかしとくっつくことは時々あったんだ。アパートにいるだけで、本当の夫婦になっていない嫁も少なくはなかったからね。そして紅さまも別にそれを咎めることはなかった。あやかしは気まぐれだからね。…それなのに」
 こづえがのぞみをじぃーと見た。