のぞみは耳を押さえて声をあげた。宮司が、いつのまにかそばまで来て、低い声で囁いたのだ。のぞみの背中を、ぞぞぞぞと悪寒のようなものが駆け抜けた。
「おおおおおどかさないでください!!」
 これから大家になるかもしれない人だということも忘れて、のぞみは彼を詰った。自慢じゃないけどのぞみは筋金入りの怖がりだった。
 テレビも映画も本も漫画も徹底的にそういうジャンルは避けてきた。修学旅行の肝試しだって無理を言って不参加にしたくらいなのだ。
(わ、わ、悪い冗談だわ…!)
 そんなのぞみの怒りも意に介さず、宮司は愉快そうにはははと笑った。
「さっきも思ったけど、君いい反応するなぁ。その、ひゃっていうの…いいね、とっても私の好みだ」