まだ少し赤いその瞳を、のぞみはじっと見つめて首を振った。
「もう大丈夫です。だ、だから、これ以上は…」
風の檻がなくなって鬼の両親が慌てて一平に駆け寄る。
「…でものぞみに怖い思いをさせた報いを受けさせなければ。二度とこのようなことがないように」
紅が眉を寄せてのぞみに言う。それがあやかしの世界の掟なら、のぞみが口出しすることではないだろう。それでものぞみは首を振る。
「もう十分です。私は大丈夫ですから、紅さまが助けて下さいましたから…」
それに一平は保育園に通う三人の子の兄だ。迎えのときに彼に飛びつく三人の笑顔が、のぞみの脳裏に浮かぶ。少なくとも彼らにとってはいい兄なのだろう。彼らを悲しませたくないと心から思う。
そんな願いを込めて、赤い瞳を見つめると、その思いは届いたようだった。
ふうとため息をついて紅はゆっくりと目を閉じた。
「…わかった」
そして一平と鬼の両親に向き直ると、厳しい視線を彼らに送った。
「一平はしばらく私の結界からは追放だ。私がいいというまでは、近づかぬよう。…二度はない」
「ありがとうございます!!」
両親が言って頭を下げた。そして紅の気が変わらないうちにと思ったのか、まだろくに歩けない一平と三兄弟を連れてそそくさと帰って言った。
のぞみはほぅっ息をつく。そしてその場に座り込んだ。頭がぐちゃぐちゃに混乱している。どきどきと鳴る鼓動もいつもの何倍も速い。そんなのぞみのうなじを紅がそっと撫でた。
「…怖かった?だが悪さをするあやかしを放っておくわけにはいかないんだ」
紅の言葉に、のぞみはゆるゆると首を振る。
「ち、違います。紅さまは怖くありません。守ってくれたから」
「一平が怖かったんだね。…かわいそうに」
そう言って紅はのぞみを膝に抱くと、小さな子どもにするみたいに頭を撫でた。久しぶりのその感覚に、のぞみの目から涙が溢れた。こんなに近くに彼を感じるのは随分と久しぶりのような気がして。
「もう大丈夫です。だ、だから、これ以上は…」
風の檻がなくなって鬼の両親が慌てて一平に駆け寄る。
「…でものぞみに怖い思いをさせた報いを受けさせなければ。二度とこのようなことがないように」
紅が眉を寄せてのぞみに言う。それがあやかしの世界の掟なら、のぞみが口出しすることではないだろう。それでものぞみは首を振る。
「もう十分です。私は大丈夫ですから、紅さまが助けて下さいましたから…」
それに一平は保育園に通う三人の子の兄だ。迎えのときに彼に飛びつく三人の笑顔が、のぞみの脳裏に浮かぶ。少なくとも彼らにとってはいい兄なのだろう。彼らを悲しませたくないと心から思う。
そんな願いを込めて、赤い瞳を見つめると、その思いは届いたようだった。
ふうとため息をついて紅はゆっくりと目を閉じた。
「…わかった」
そして一平と鬼の両親に向き直ると、厳しい視線を彼らに送った。
「一平はしばらく私の結界からは追放だ。私がいいというまでは、近づかぬよう。…二度はない」
「ありがとうございます!!」
両親が言って頭を下げた。そして紅の気が変わらないうちにと思ったのか、まだろくに歩けない一平と三兄弟を連れてそそくさと帰って言った。
のぞみはほぅっ息をつく。そしてその場に座り込んだ。頭がぐちゃぐちゃに混乱している。どきどきと鳴る鼓動もいつもの何倍も速い。そんなのぞみのうなじを紅がそっと撫でた。
「…怖かった?だが悪さをするあやかしを放っておくわけにはいかないんだ」
紅の言葉に、のぞみはゆるゆると首を振る。
「ち、違います。紅さまは怖くありません。守ってくれたから」
「一平が怖かったんだね。…かわいそうに」
そう言って紅はのぞみを膝に抱くと、小さな子どもにするみたいに頭を撫でた。久しぶりのその感覚に、のぞみの目から涙が溢れた。こんなに近くに彼を感じるのは随分と久しぶりのような気がして。