「のぞみ、…腕をどうしたの?」
「…え?」
問いかけられて、のぞみは自分の腕を見る。その時になって初めて腕があざになっていることに気がついた。毎日、一平にしつこく掴まれるところだった。なんとなく痛いなとは思っていたけれど、初夏の夜は少し冷えるので仕事中は毎日長袖にしているせいか気がつかなかった。今日は少し蒸し暑くて、半袖にしたのだ。
「どうしたの?仕事中に?」
答えられないのぞみに紅が再び問いかける。一平に掴まれたのだと説明すれば、理由を言わないわけにはいかないだろうし、さりとて他にうまい言い訳も思いつかずのぞみは黙り込んでしまう。
そんなのぞみに紅が少し焦れたように歩み寄る。そしてあざになっている腕に優しく触れた。
「…っ」
どくんと心臓が跳ねる音が耳に響いてのぞみは唇を噛んだ。やはり一平に掴まれた時とは明らかに違う自分自身の反応に、戸惑うばかりだ。一方で、紅の方は薄暗い中でじっと目を凝らして腕のあざを確認している。そして、少し鼻を寄せて呟いた。
「…鬼?」
ぴくりと身体を震わせてのぞみは反応してしまう。さすがはあやかしの長、あざに残る"何か"でつけた相手までわかるなんて。だが、鬼の中の"誰か"までは特定できないようだった。
「…え?」
問いかけられて、のぞみは自分の腕を見る。その時になって初めて腕があざになっていることに気がついた。毎日、一平にしつこく掴まれるところだった。なんとなく痛いなとは思っていたけれど、初夏の夜は少し冷えるので仕事中は毎日長袖にしているせいか気がつかなかった。今日は少し蒸し暑くて、半袖にしたのだ。
「どうしたの?仕事中に?」
答えられないのぞみに紅が再び問いかける。一平に掴まれたのだと説明すれば、理由を言わないわけにはいかないだろうし、さりとて他にうまい言い訳も思いつかずのぞみは黙り込んでしまう。
そんなのぞみに紅が少し焦れたように歩み寄る。そしてあざになっている腕に優しく触れた。
「…っ」
どくんと心臓が跳ねる音が耳に響いてのぞみは唇を噛んだ。やはり一平に掴まれた時とは明らかに違う自分自身の反応に、戸惑うばかりだ。一方で、紅の方は薄暗い中でじっと目を凝らして腕のあざを確認している。そして、少し鼻を寄せて呟いた。
「…鬼?」
ぴくりと身体を震わせてのぞみは反応してしまう。さすがはあやかしの長、あざに残る"何か"でつけた相手までわかるなんて。だが、鬼の中の"誰か"までは特定できないようだった。