のぞみは思わず声をあげた。そういえばそんなアプリがあったような…。
「その方法だと、"ぞぞぞ"も銭も同時に稼ぐことができるからね。賢いとは思うけど、桁違いに稼ぐから態度がでかくなってきて他のあやかしにとってはいい迷惑さ」
 なるほど、だから鬼一家はいつも良い服を着ているのか。
「とにかくこのことは紅さまに報告して、一平にはきつく言ってもらおう」
 だがそういうサケ子の言葉にのぞみは慌てて首を振った。
「こ、紅さまには、言わないでください!お願いです。私、大丈夫ですから」
「でも…」
 サケ子が眉を寄せた。
「本当に!さっきサケ子さんがきつく言ってくれたから、もう大丈夫ですよ。…そもそも一平さんはほとんどお迎えに来られないですし…」
 サケ子はそれもそうだと思ったのか、黙って頷いた。
 のぞみはホッと息を吐く。
 これ以上紅を煩わせなくないと強く思う。トラブルを起こして、やっぱり人間なんか雇うんじゃなかったなんて思われたらと想像するだけで胸がぎゅっとなった。
 のぞみはふるりと震えて、自分で自分を抱きしめる。一平に掴まれた腕がズキズキと痛んだ。紅以外の人に触れられたくないというこの気持ちの正体に、のぞみはもう気がつきかけている。それでも目を逸らすしかないと自分に言い聞かせて、唇を噛んだ。
 気がついてどうにかなるものでもないだろう。
 そう彼は…、好きになってもどうにもならない相手なのだから。