「…のぞみ、高いのも苦手なのかい?」
 神社の裏の大木の枝に並んで腰を下ろして、紅が少し呆れたようにのぞみに言った。のぞみは紅を睨んで頬を膨らませる。
「べつに苦手じゃありません!でもあ、あんな風に突然飛び上がったら、誰だって怖いに決まっています!」
 紅のいう"近道"とは、空を飛んで神社まで戻るという、のぞみの想像を絶するものだった。確かにあっという間についたけれど、その間は生きた心地がしなかった。
 神社に着いて巨木の上に下される頃にはのぞみは大量の"ぞぞぞ"を出してしまい今それは二人の周りをふわふわと浮いている。紅は苦笑しながら、膨らんだのぞみの頬をつついた。
「のぞみを、元気付けようと思ったんだけど…」
「でも、いきなりなんだもん」
「ふふふ、震えて私にしがみつくのぞみ、可愛かったよ。柔らかくて、ほのかに甘い香りがして…」
「もう!紅さま、変態!」