まさかこんなに若い人だなんて。
 さらにいうとものすごくイケメンで…。
 そんなことを考えて立ち尽くしているのぞみを、鳥居のところまで行った宮司が振り返る。その瞳が一瞬、紅く光って見えた気がしてのぞみはこくりと喉を鳴らした。
「…どうかした?」
 鳥居の上にとまるカラスが、かぁと鳴いた。
「あ、いえ…」
 慌てて返事をしてのぞみは階段をゆっくりと上る。頂上まで近づくにつれて鳥居の向こうに本殿が見えてきた。
 古びた大きな本殿は鬱蒼とした森の陰になって、少し暗く見える。思わず振り返ると、さっきまでカンカンに晴れていたはずの空は灰色の雲に覆われていた。あんなに暑かったはずなのに、今は少し肌寒ささえ感じるくらいだ。
 のぞみはふるりと小さく震えて、自分で自分をぎゅっと抱いた。
「…天気が、悪くなってきましたね」
 呟くと、背後で宮司がくすりと笑った。
「そう? …ここはいつもこんなもんだよ」