のぞみはホッと息を吐いた。
 こづえは紅が言った通り子思いの母親だった。保育園でかの子が見せる寂しそうな表情にかわいそうだなどと思っていたのぞみだけれど、それは間違いだった。こづえのような母親に愛されているのだから、かの子は幸せな子どもなのだ。のぞみはそれを心の底からうらやましいと思った。
「こづえ、今日はまだ稼ぐのかい?」
 紅が尋ねるとこづえは、首を傾げて少し考えてから首を振った。
「いつもなら、これから二次会に繰り出す輩に混じるところだけど、今日はさっきの子たちが意外と怖がりだったからね。十分な"ぞぞぞ"も稼いだことだし、たまには早く帰るとするよ」
 早く迎えに来た母親にびっくりして大喜びするかの子の笑顔が頭に浮かんで、のぞみまで嬉しくなってしまう。
「かの子ちゃん、喜ぶでしょうね!」
 思わず袖を引いて笑いかけると紅がにっこりと微笑んでのぞみの頭をそっと撫でた。