「そ、そんなことはないと思います!」
 のぞみは思わず声をあげる。
 こづえが目をパチパチさせてのぞみを見た。
「か、かの子ちゃんは、始まる前も保育園時間もいつもいい子にしています。…お迎えの時間は寂しくなっちゃうこともありますけど…お母さんがお仕事を頑張っているって、分かってるんだと思います。…もしよかったら、今まで通り、保育園が始まる前は私のアパートに連れてきて下さい」
 こづえが少し意外そうに首を傾げた。
「こづえさんのお仕事が、明るいうちから始まるのは変わらないでしょうし、それに私かの子ちゃんが来るのは、楽しみにしてるんです。今日かの子ちゃんがアパートに来なくて寂しかったのは…私も一緒でした」
 今日はかの子もどことなく元気がなかった。それもこれも自分が引き起こしたことなのだと思うとかの子に対しても申し訳ないと思う。そしてなによりお母さんが仕事に行ってから保育園へ開くまでの時間を安全に過ごしてほしい。
 そんな思いを込めてのぞみがこづえを見つめると、彼女は安堵したように小さくため息をついて頷いた。
「ありがとう、そうさせてもらうよ」