べつに嫌味でもなく言う紅の様子にやはりとのぞみはわずかな落胆を覚える。今目の前でこづえが仕事をしないで遊んでいるのを見たというのに、やはりそれでもいいということか。これがあやかし園のルールなのだ。
「今日はうまくいきそうかい?」
 だがそんなのぞみの内心はよそに紅がこづえに尋ねたとき、こづえが抜けたあとの男女が騒ぎ始めた。
「ねーねーじゃあさー連絡先交換しようよー! グループ作ろう、グループ」
「いいよ~!」
「えーと女の子たちは、ひとりふたり…あれ?君たち四人じゃなかった?」
「…そうだよ。今日は四対四で…って、あ、あれ…?」
 こづえが男女に背を向けたまま、ニヤリと笑う。そのいかにもあやかしらしい笑みにのぞみの背筋がぞぞぞと震えた。一方で彼らの方にはこづえの姿はもう見えていないようで、一人足りないと騒いでいる。
「えー…たしかにいたよね? ほらレシートにも八名様って…」
「…」
「…そういえば、私、聞いたことがある。この辺りで合コン後に女の子が一人足りなくなる現象。現代の座敷童子なんて言われてるんだよ。…都市伝説だと思っていたけど…」
「やだっ!」