いやそれよりも二人でわざわざ行く必要がないように思う。
 だが紅はにっこりと笑って、「大丈夫」と言った。
「うちは夜間保育園だから、書類は大抵守衛さんに預けることになってるんだ。おーい!サケ子!」
 サケ子がはいはいと言って現れた。
「私はのぞみと、役所へ行ってくるよ。ちょっと寄り道するかもしれないからね。あとを頼む」
 勝手なことを言う紅にサケ子は慣れた様子でまたはいはいと言った。
「でもわざわざ二人で行くほどでも…」
 のぞみは躊躇して言い淀む。
「いいからいいから、ちょっとのぞ先生を借りるよ」
 紅はのぞみにひっついている鬼の子にそう言ってのぞみの手を引っ張った。
「紅さま、ずるーい!」
 鬼の子が不満げに声をあげる。のぞみは小さなツノがぴょこんと生えている二人の頭を優しく撫でた。
「先生たち、お仕事だからね。ごめんね」