「こづえ、のぞみはかの子を本当に心配してるんだよ」
 紅がのぞみとこづえの間に割って入る。こづえは紅に訴えた。
「でも紅さま、これじゃあんまりだ。まるで私が遊びまわっているみたいじゃないか。そもそも紅さまは子どもを預けている間、親が何をしていてもいいって言ったでしょう?」
 紅は、「それはそうだよ」と頷いてから、「それでも」と言葉を続けた。
「もとはといえばお前の迎えが遅いのが原因だろう?のぞみは早い時間からかの子と一緒にいて、あの子をずっと見ているんだ。少しくらい意見してもいいはずだよ」
 紅の言葉にこづえは黙り込んで悔しそうにのぞみを睨んだ。
 のぞみは早くもこの話をしたことを後悔し始めていた。こんなこと、言ったからどうなるものでもないだろうに。
 こづえが本当に子思いの母親で、仕事をしていない時間があるのならのぞみなどに言われなくとも迎えに来ているだろうし、そうでないならのぞみが何を言っても変わらないだろう。
「私は、お前が何をしてようと構わないよ。ただ今後はルールは守ってもらう。いいね?」
 紅が言うと、こづえはしぶしぶ頷いた。そして、やや乱暴にかの子を引っ張って森へ帰ってゆく。その後姿を見つめながらのぞみの胸がキリリと痛んだ。