泣き疲れたのか、指を吸いながら眠たそうに目を閉じる女の子の頭を撫でて、男性がのぞみに尋ねる。
 のぞみは慌ててポケットに入れていたメモを出した。さっきまでいた不動産屋さんの名前が書いてある。おじさんに、宮司にはうちの名前を言えばいいと言われて渡されたのだ。
「稲荷不動産のおじさんからのご紹介で来ました。…アパートを借りかれるかもしれないってお聞きして…」
 ごにょごにょと、少し声が小さくなってしまう。ここで子どもを預かっているという言葉、衣服から察するに彼は神社の関係者なのだろう。
 今更ながら、格安でアパートを借りられるなんてそんな都合の良い話が本当にあるのだろうかと少し不安になった。
 一方で目の前の男性の方はというと少し意外そうに眉を上げてのぞみを見た。
「君が…?」
 のぞみは頬を染めた。
「あ、あの一応成人はしています! 二十一歳です!!」
 とりあえず賃貸借契約を結べる年齢だということをアピールする。さっきの不動産屋ではそれを真っ先に確認された。
 それでなくてものぞみは童顔で、未だに高校生に間違えられることがある。