それにしても木月さんといい、リョウといい、隠しごとができないタイプみたい。
 気づけば顔が自然にほころんでしまっていた。

「まさか、俺とうさぎさんが恋人同士とか思ってた?」

 ひょいと顔をのぞきこまれ、反射的に首を横にぶんぶん振る。
 リョウはクスクス笑うと、また海を見た。

 その目が急に温度を失くしたように見えたのは気のせい?

 鼻から息を吐いたリョウが、
「俺は恋愛なんてしたくない」
 そう言った。

「そんな時間があるならバイトして金を貯めるほうを選ぶ」
「……だよね」
「あー、さっさと大人になりたいわ」

 波がさっきよりも静かに海に模様をつける。濡れた靴下が気持ち悪い。

「そろそろ帰ろうか」

 リョウの言葉にうなずいた。

 うさぎさんへの罪悪感。
 木月さんの幸せ。
 恋をしないと誓ったリョウ。


 彼は、誰のことも好きにならない。


 その事実に打ちひしがれているのに、ことさら明るく振る舞った。



 まるで私はピエロだ。