といっても毎日行くわけじゃない。週末はそれなりに人も多いし、日曜日は逆にシャッターが閉まっている店も多い。
 私が行くのは平日、それも木曜日までと決めている。

 これもマイルールのひとつだ。

 今日は何日だっけ? 最近、学校もサボりがちになっているので、日付さえあいまいになっている。

「期末テストは大丈夫なの? ノート、コピーしようか?」

 やさしい明日香に首を振った。期末テストがあることすら忘れていたけれど、ノートをコピーしても活用しない自信がある。
 怠惰(たいだ)という名の水の流れに身を任せている私にとって、学校もテストもどうでもいい話。もちろん卒業しなくてはならないのはわかっているけれど、考えるのもおっくうだ。

 いつから私はこんなふうになったのだろう……。

 モヤッとした気持ちは、景色と同じように見ないことにするのがいちばん。見なければ、ぜんぶなかったことになるから。

「大丈夫。なんとかなるよ」

 ニッと笑ってみせる私に、明日香は「そっか」と言葉とは裏腹に、心配そうな表情でうなずいた。

 申し訳ないな、といつも思う。
 幼なじみという呪縛(じゅばく)から明日香を解放してあげたい。でも、言い出せずに私は視線を落とす。

喜久川(きくかわ)さん」

 クラス委員の青山さんが、しっかりとうしろで一本結びした長い髪を揺らし近づいて来る。
 明日香が「ん?」と左を見た。私はまた机の落書きに視線を合わせる。

「今日の日直って喜久川さんだよね。黒板消さないと五時間目がはじまるよ」
「あ! そうだった。忘れてた」

 バタバタと駆けていく足音。青山さんの視線がまだ私に残っているのを感じる。
 なにか言いたげに、私が顔をあげるのを待っている様子。
 彼女の上靴の先っぽだけが見えている。

 じっと動かずにいると、ようやく視界から彼女の上靴が消えた。教室のざわめきが、またぐるぐると(うず)を描き出す。

 ――ここはなんて息苦しい場所なんだろう。

 窓に目をやると、さっきよりも暗い景色が広がっている。天気予報どおり、午後は雨になるのだろう。
 ざわめきを切るようにチャイムが鳴り出した。

 (かげ)りゆく教室で、ようやくひとりになれたとホッとする。