私よりもきれいで、私よりも満たされていると思っていた。どこか大げさに言っているにしても、うさぎさんが孤独を感じているのは伝わってくる。

 大人って大変なんだな……。

「そうそう」

 急に思い出したようにうさぎさんがスマホを取り出した。

「これ見て。新しいカットモデルなの」

 きれいな指先でスマホを操るうさぎさんがうれしそうに一枚の写真を見せてきた。
 クールなまなざしで私を見つめる男子。リョウだった。

「無理言って写真撮らせてもらったの。今度ホームページに載せようと思って」
「あ、そうなんですか」
「リョウは見た目がいいから人気出そうじゃない?」
 
 クスクス笑ううさぎさんの向こうで、また横断歩道が青に変わった。

「いいですね。リョウならピッタリです」
「でしょう? あとあたし、木月さんもカットモデルにしたいんだけど――」
「ごめんなさい。帰らないといけなくて」

 気づけばうさぎさんの話を(さえぎ)っていた。彼女は気にした様子もなく、「ごめん」と笑った。

「あたしばっかり話しちゃってた。またお店でね」
「はい」

 ペコリと頭を下げ、青になったばかりなのに横断歩道を駆け足で急ぐ。
 渡り終え振り向くと、うさぎさんは大きく右手を振ってくれた。

 なんてまぶしくて生き生きしているんだろう。

 軽く頭を下げてから、急ぐフリで帰路に着く。
 うさぎさんはリョウのことをやっぱり好きなんだろうか。自分の問いにも、前みたいに強気に首を横に振れない。
 さっきまで感じていた楽しい気分はどこかへ吹き飛んでしまっていた。

 行きはよいよい、帰りはブルー。


 太陽がやけにまぶしく、私を焼いていた。