「えー、生徒の皆さんは各自荷物をまとめておくように。ホームルームは十分後に行います」
赤ジャージの声に、みんなの騒ぐ声のボリュームが大きくなる。
さっさと終わらせてくれればいいのに。
あごを手のひらに乗せ、窓の外を見やった。梅雨明け宣言と同時に晴れ渡る空は、太陽の光が攻撃するように降り注いでいる。
太陽は好きじゃない。
まぶしすぎて見てられないから。
それにしても今朝は参った。終業式だけでお弁当はないのに、朝から料理をさせられたのだ。
その名も〝伊予風唐揚げ〟。前に教えてもらった唐揚げの応用パターンとのこと。といっても、肉の味つけに味噌を加えるだけだったけれど。
『昼帰ってきてご飯ないと困るやろ。これは冷めてもうまいねん』とやたら張り切っていたっけ。まだ体に油のにおいが残っている気がする。
ふと、バイクのエンジン音が聞こえた。続いて甲高いブレーキをかける音。
見ると、校門に一台の原付バイクが停車したところだった。
「あ……」
最初は黄色いヘルメットが目に入った。両手でヘルメットを取ると、金色の髪がふわっと揺れた。
バイクにまたがったままで校舎を見渡しているのは――リョウ!?
ガタッ!
弾けるように立つ。周りの子がギョッとした顔をしたけれど気にしてられない。
教室を飛び出すと階段まで走る。
リョウが学校に来てくれた!? それだけでさっきまでのマイナスな思考はどこかへ飛んで行ったみたい。
「出水さん!」
なのに、踊り場で私は呼び止められた。必死の声に思わず立ち止まると、階段の上に青山さんが立っていた。
「どこへ、行くの?」
全速力で駆けてきたのだろう、息を切らせながら一段ずつ階段をおりてくる。
「……え?」
「あのバイクの男性、知り合いなの?」
「…………」
答えずに行こうとする私の腕を強引に掴んだ青山さん。ふりほどこうとするけれど、強く握られていて離れない。
「お願い、行かないで」
あまりに真剣な表情に戸惑う。
赤ジャージの声に、みんなの騒ぐ声のボリュームが大きくなる。
さっさと終わらせてくれればいいのに。
あごを手のひらに乗せ、窓の外を見やった。梅雨明け宣言と同時に晴れ渡る空は、太陽の光が攻撃するように降り注いでいる。
太陽は好きじゃない。
まぶしすぎて見てられないから。
それにしても今朝は参った。終業式だけでお弁当はないのに、朝から料理をさせられたのだ。
その名も〝伊予風唐揚げ〟。前に教えてもらった唐揚げの応用パターンとのこと。といっても、肉の味つけに味噌を加えるだけだったけれど。
『昼帰ってきてご飯ないと困るやろ。これは冷めてもうまいねん』とやたら張り切っていたっけ。まだ体に油のにおいが残っている気がする。
ふと、バイクのエンジン音が聞こえた。続いて甲高いブレーキをかける音。
見ると、校門に一台の原付バイクが停車したところだった。
「あ……」
最初は黄色いヘルメットが目に入った。両手でヘルメットを取ると、金色の髪がふわっと揺れた。
バイクにまたがったままで校舎を見渡しているのは――リョウ!?
ガタッ!
弾けるように立つ。周りの子がギョッとした顔をしたけれど気にしてられない。
教室を飛び出すと階段まで走る。
リョウが学校に来てくれた!? それだけでさっきまでのマイナスな思考はどこかへ飛んで行ったみたい。
「出水さん!」
なのに、踊り場で私は呼び止められた。必死の声に思わず立ち止まると、階段の上に青山さんが立っていた。
「どこへ、行くの?」
全速力で駆けてきたのだろう、息を切らせながら一段ずつ階段をおりてくる。
「……え?」
「あのバイクの男性、知り合いなの?」
「…………」
答えずに行こうとする私の腕を強引に掴んだ青山さん。ふりほどこうとするけれど、強く握られていて離れない。
「お願い、行かないで」
あまりに真剣な表情に戸惑う。