一度口からあふれた言葉はもう止まらない。

「私はひとりでも平気。ずっと平気だった。さみしいのは私じゃない、お父さんでしょ!」

 傷ついたような顔。
 伏せる目。

 こんなこと、言いたかったわけじゃない。こんなふうにならないように、ずっと平気なフリをしてきたのに。

「お父さんなんて嫌い。お寿司も大嫌い!」

 リビングを飛び出し、階段を駆けあがり自分の部屋へ。怒りに任せてドアを閉めた。
 電気もつけずにベッドに倒れこむ。

 振りかざしたナイフはお父さんを傷つけ、その表情にもっと自分が傷ついている。これじゃあ、全然自分を助けてあげられていない。

 でも、どうしていいのかわからないよ。

 いつの間にか流れている涙は、悔しいからなのか悲しいからなのかすら不明。

 ただわかるのは、今誰よりもリョウに会いたい。


 それだけ。