「前にも言ったやろ。亜弥ちゃんは大人やねんから、自分の判断でなんでもやったらええねん。ジツを生きるってことや」

 最後の言葉の意味がわからず眉をひそめる。

「ジツ?」
「そう、ジツ。現実の〝実〟ってこと。亜弥ちゃんが実際の自分で生きられているなら、それがいちばんや」
「そういうもの?」
「そういうものや」

 ガハハと笑うと、伊予さんは残りのコーヒーを一気飲みして立ちあがった。

「今日はええ日やな。テストがんばってな!」


 なんだか納得ができない朝だった。