ハッとして顔をあげると、リョウのバイクが走り出したところだった。
 すぐそこにある交差点が赤になり停車する。

「リョウ!」 

 大声で呼びかけると同時に私は走り出していた。

 伊予さんは言っていた。
 自分を救えたから他人を救える、と。
 そして……危ないことはするなと。危険を伴うと!

 私に気づいたリョウが振り返って手を挙げた。


 ――ギギギギギ。


 大きな音とともに地面が揺れた気がした。

 え……。そう思う間もなく、大きなトラックが姿を現した。
 交差点を曲がり切れず斜めになった車体が勢いそのままに突進して来る。
 まぶしいヘッドライトがリョウを浮かびあがらせた。

「リョウ!!」

 手を伸ばす。

 必死で手を伸ばす。


 届いて! どうか届いて!



 大きな衝撃のあと、激しい痛みとともに世界は真っ暗に変わった。