お父さんを待たせて私たちは浜辺へ降りた。
 さっきよりも暗闇に沈む海は、まるで怪物のように波の音を叫んでいた。ふたりにさっきまでいた場所を説明させられ、向かう。

 間違いじゃない。さっきの別れは間違いじゃない。

 それでも、怪物は私を責めるように泣いている。
 さっきふたりで座っていた場所に来ると、明日香は「さて」と腕を組んだ。

「あのね、亜弥」
「うん」
「あたしたちは亜弥のこと応援してんだよ」
「そうそう。リョウさん素敵だし、亜弥にお似合いだもん」

 そう言うふたりに私は首を振った。

「待ってよ。私、べつにリョウのこと好きじゃないし」
「亜弥!」

 急にお母さんみたいな口調になる明日香。両手を腰に当てた彼女が私をまっすぐに見ていた。

「あたしたちに嘘つかないで」
「え……」
「見てたらわかるし、言わなくてもわかるんだから」

 怒っている。誰もが私に怒っている気がした。
 隣に並んだ小春が砂浜を指さした。

「ケンカしてる場合じゃないって。先に探さなきゃ」
「探す、って……」
「ペンダントだよ」

 そう言うと小春は懐中電灯を取り出し、あたりを照らした。

「ひとつしかないから、ふたりはスマホのライトを使ってね」
「亜弥」

 明日香が私の手を取った。

「自分の気持ちについての整理はあとにしよう。今は探さなきゃ」
「でも……」
「二度とリョウさんに関わらないと決めたならそれでもいいよ。だったらなおさら、返さなくちゃいけないよね?」

 そう言って明日香は小春が照らす光の中へ進んだ。

「この辺?」
「たぶん……もう少し右?」
「オッケー」

 小春がそちらへ光を向けた。

「ふたりとも、このためにわざわざ来てくれたの?」