SNSはどんどん便利になっていく。帰り道、明日香からまずメッセージが来て、あったことを正直に書きこむと、そこへ小春が加わりグループチャットになった。
 最後はグループ通話に変わり、私は質問攻めにあった。

『せっかくのデートなのに? どうしてそうなっちゃうわけ?』

 明日香の声に私は「うーん」と答えた。

「だって、私みたいな人がいたら、リョウのジャマになるだろうし」

『そこがわからない』と小春は不満げ。

『べつに友達なら見守ってあげるだけでいいじゃん』
「そうなんだけど……。うまく言えないよ」
『じゃあ考えて。このまま待ってるから』

 明日香がそう言い、ふたりはテレビの話をしはじめた。

「……つまり、あれだよ。私とリョウは進む道が違うってこと。だったら離れたほうがいいと思ったの」

 私は『友達として』の嘘をつき続けるしかない。こんな感情、きっとふたりに話をしても伝わらないだろうから。
 ふたりからの返事がない。

「ちょっと聞いてる?」

 しびれを切らし尋ねると『うん』とふたりの声が重なった。

『今、どこにいるの?』

 明日香の声に「駅前」と答える。バスをおりてからずっと、夕刻に座っていたベンチに腰をおろしている。なんだか帰りたくなかった。

『とりあえず家に戻って』
『それがいいよ。早く帰って』

 ふたりの声に「はいはい」と立ちあがる。
 あっさりと切れた通話。家への道を歩き出す。ふたりのおかげで帰り道は罪悪感にさいなまれることは少なかったし、決断できた自分を少し褒めてあげたいくらい。
 伊予さんの占いにも似た予言を実行できたし、これでよかったんだ。
 リョウはまっすぐに夢を追い、私は怠惰な毎日に戻る。それだけのこと。

 ――なのに。

 さっきよりも胸が痛い。頭も痛い。悲しみの波の音がもっと大きく耳で響いている。

「え……?」

 家の近くまでようやく帰って来たときに、その異変に気づいた。
 玄関に横づけするように一台の車が停まっていたのだ。

「お父さん?」

 近寄ると、やはりお父さんの車で間違いない。路上駐車なんてしたことないのに……。