最近は昼間、街に来る機会が増えた。

　四時を過ぎても、太陽はまだまだ強く街を照らしている。　
　これまでは夜にしか行動していなかった吸血鬼が、新しい力をもらって太陽を恐れなくなったみたい。

　けれど、セミの声を従え輝く太陽よりも、夜の月を恋しく思ってしまう。
　待ち合わせ時間まではまだ一時間もある。家にいても落ち着かなくて早めに着いてしまった。

　駅前のベンチに座り、することもなく行き交う人を観察する。
　日曜日の行楽(こうらく)を終えたらしき家族連れが、駅から吐き出されている。疲れと一日の充足感をにじませた人は、それぞれの家に帰っていくのだろう。

　私だって幸せなはずなのに、お腹の中にモヤモヤがある。それは、昨日お父さんが言ったことが原因ではなく、ましてや明日香でもない。

　すべての原因は、伊予さんだ。

　結局よく眠れないまま朝になってしまった。昼寝をしようとしたけれど、今度はリョウとの約束が気になって目が冴(さ)えてしまった。
　どの瞬間も、気がかりのせいで落ち着かない。

　……もう一度。

　記憶をたどり、伊予さんの言葉を考えてみる。


　昨日伊予さんが私に言ったことを、ひとつひとつ……。