「もう」

 明日香が私の手を取った。

「リョウさんが亜弥に告白してくれてるんだよ」

 ギョッとする私に、
「間違いない」
 青山さんも同意した。

 こく、はく……。告白? まさか!?

「違うよね? レンタル品みたいな言いかただったし」

 一気に頬が熱くなる。

「さあな」

 リョウが捨てゼリフよろしく店に向かって歩き出した。

「待ってよ。ねぇ、待って」

 必死に呼びかけると、リョウはくるりと振り向いた。

「今度の日曜日の夕方、空けといて」
「えっ……?」
「許可はもらった。夕方、五時に駅で。じゃあな」

 駆けていくうしろ姿はすぐにシルエットのように黒く変わる。カンカンと音を立て階段に消えたリョウを、ぽかんと見送った。

「すごいじゃん、告白されたね!」

 きゃあ、とはしゃぐ明日香たち。

「ち、違うよ。ただ、用事につき合わせたいだけでしょ!」
「なに言ってるのよ。あんな告白の仕方もあるんだね」
「もう、明日香うるさい! ね、青山さんも違うって思うよね?」

 今のが告白? そんなのありえない。

 必死で青山さんに同意を求めるけれど、青山さんは口元に笑みを浮かべたままゆっくり目を閉じた。

「素敵な告白でしたねぇ」
「小春!?」

 思わず名前を叫んでしまった。

「てことで」

 私の肩に手を回した明日香が駅のほうを指さした。

「マックで乾杯しよう!」
「そうしよう!」


 繁華街に響き渡るくらいのボリュームではしゃぐふたりを、私はただぼんやりと見ているだけだった。