「……わ、わ、私は、……しーみず照道に、いいいじめられてないです」
ぐっと、喉が詰まるのを堪えて、声を出す。やっぱり、全然出てこない。でも、言わなきゃいけない。手をぎゅっと握りしめて、つま先に力を込めながら言葉を出していく。
「あああいつ……は、ろ、ろーく月に、……はは初めて、……あったとき、私を、良くわかんない……じっと見るように、み見てきて、しーらないのに、……、えっと、……なんだこいつと、お、お、思って。でも……その後。……歩いているとき、話しかけられて、こ、こ、こ、こ困ったとき、……あいつは、たー、……助けてくれて、で、で……伝言を、か、代わってくれた。そのあと……わ、私の、か、か……顔色が、悪いと、ほーけん室に、えっと、……連れて、……行って、……、あの、……そ、その後、でで、出てない……授業の、ノートを入れてきた。……、……さ、さ、差出人は、わーからないし、あいつに、……聞いてない、けど、じ、字は、ああ、あいつの、じー、字、だった」
拳を握って、こするように膝をする。まだ、半分も言えてない。これからまだ、倍の量もあるのかと、足がすくむ。隣を見ると、萩白さんが力強く頷いた。頷き返して、私はまた、マイクに顔を向ける。
「そ、そ、……その後、と、とと、と、突然、あいつ、は、……わわ、私を好きだと、くーらす、の、……ま、前で言って……私を、かーらかうように、なった。……、……えっと、理由は、……よくわからない。くくクラスの、人間は……、そーれに、わ、わ、わ、笑って、……あいつの、せいで、私は、笑いものに、……さ、さ、されてきた。……でも、……、……な、な、夏休み、の、前、……あいつは、か、か、傘のない、わーたし、雨、のとき、か、か、傘を、差しだしてきて……、自分は、……ずぶ濡れになっていた。つ、つつつ突き飛ばしても、わーたし、を、か、……傘に、いーれてきて、……、こ、こ混乱した。……その後、……、えっと、……校外学習で、も、あああいつは、道が分からなくなった私を、か、かか雷が鳴って……あーらし、みたいに、なっているとき、……か、……風邪をひいているのに、……、……、ひ、一人で、探しにきた。……お礼にと、私の、おー母さんと、……おー父さんが、か、買ってきた、くく、く、クッキーを、おいしいと、……喜んで食べた」
そうだ。あいつは私を助けようとしていた。ずっと、ずっと前から。声は震えるし、ちっとも出てこない。でもあいつのことを思い出していると、あいつに会いたい気持ちが出てきて、目頭がぎゅっと熱くなった。私は首を振って、またマイクに話を始める。
「……がっ、合唱コンクールの、……前は、私が、吐いたとき、……や、や、奴は、じ、じー分の、……パーカーで、ふ、ふふ、ふ、拭いた。わーたしの、ために、……怒って、わ、わ、私が、くくく暗い、道を、……一人で、帰ろうとすると、おーいかけてきた。……あ、あいつは、私をからかう。みんなの前で、……私を、好きだと言って、……笑いものにする。く、くー、くそ詰まんないから、お、面白くしてやると、かー、かーげで、言っているのも聞いた。えっと。……だから、は、は、腹が、立つ。し、……嫌だと思う。……でも、ああああいつは、……、あの、……私を、た、助けてくる。あいつは、め、め、めちゃくちゃだ」
あいつは、めちゃくちゃだ。よく分からない。きっと色んなことを、私に隠してる。でも。
「……でも、……、……わ、私も、……あ、あいつに対して、思うことが、……め、め、めちゃくちゃだ」
言ってから、息を吐いた。そして、また拳を握りしめ、膝をするようにして、また言葉を発する。
「あ、あーいつが、き、嫌いだ。私は。……でも、あ、あいつに、く、くーるしんで、ほしくないと、思う。……あいつが、……名前を取られるのが、い、いやだ。……でも、あ、あ、あ、あいつに、ふっ、……ふ、ふーくしゅう、してやるとも、……思わなくもない。ぐ、ぐ、ぐちゃぐちゃで、……、よ……よくわからない。ど、どーが、を、……撮ったの、も、……、……どうして、そ、そ、そ、そんなことを、しー、したのか、わ、わ分かりそうで、わわ、分からない。わーたしはあいつの、……き、……き、……気持ちを、知りたい」
私は、多分あいつについて、何も知らない。あいつについて知っていることは多分だけど、あいつが知らせたいと思ったことだけだ。だから私は知りたい。知らなきゃいけない。
「だ、だ、だからあいつは、……あいつだけ、は。……し、し、清水、てーるみちを、……、……裁くのは、処分をするのは、わわ私がいい私がする。……私は、あいつが、な、な、何をしたいのか、……わーからない。あ、あいつのことを、なな何も知らない。……、だから、きちんと知って、知ってから、わ、……わ、私はあいつに、何をするのか……き、き、き決める。……、……だから、ネットの人は、あいつに、何かしようと、……し、しなくていい。わ、わー、私がする。……、私が話を聞いて、……私が、きき、……決める。だ、だから、てーれび、も、ね、ネット、も、な、な、な、何も、し、しーなくて、いい」
だから、これ以上何もしないでほしい、祈りを込めて言ってから、私はマイクのスイッチに手を当てた。
「い、以上っ、……です」
言い終えて、急いでマイクをオフにする。額にはどっと汗が噴き出ていて、背中には汗が伝い、手はびっしょりと汗で濡れいている。大きく息を吐いていると、途端にどんどんと扉をたたく音や、安堂先生がこちらにかける声が外から響いてきた。驚いていると萩白先輩は困ったように私の肩に触れる。
「お疲れさま。君と、一緒にこうして勇気を出せたことを喜びたいところだけど……、実は放送の途中から、外ではかなり騒ぎになっているんだ。とりあえずバリケードを解いたら、私たちはお咎めみたいなものは覚悟しなきゃいけないね」
「ま、……、ま、……巻き込んで、……ご、ご、ごめんなさい」
「気にしないで、私はこの先何があろうとも、今この瞬間のことを後悔なんてしない。今私は、本当に素晴らしく、清々しい気持ちなんだ」
萩白さんは私に向かって手を差し出す。私はその手を握り、握手をする。そうして私たちは笑みを交わしてから、バリケードを外すために机へと手をかけたのだった。
ぐっと、喉が詰まるのを堪えて、声を出す。やっぱり、全然出てこない。でも、言わなきゃいけない。手をぎゅっと握りしめて、つま先に力を込めながら言葉を出していく。
「あああいつ……は、ろ、ろーく月に、……はは初めて、……あったとき、私を、良くわかんない……じっと見るように、み見てきて、しーらないのに、……、えっと、……なんだこいつと、お、お、思って。でも……その後。……歩いているとき、話しかけられて、こ、こ、こ、こ困ったとき、……あいつは、たー、……助けてくれて、で、で……伝言を、か、代わってくれた。そのあと……わ、私の、か、か……顔色が、悪いと、ほーけん室に、えっと、……連れて、……行って、……、あの、……そ、その後、でで、出てない……授業の、ノートを入れてきた。……、……さ、さ、差出人は、わーからないし、あいつに、……聞いてない、けど、じ、字は、ああ、あいつの、じー、字、だった」
拳を握って、こするように膝をする。まだ、半分も言えてない。これからまだ、倍の量もあるのかと、足がすくむ。隣を見ると、萩白さんが力強く頷いた。頷き返して、私はまた、マイクに顔を向ける。
「そ、そ、……その後、と、とと、と、突然、あいつ、は、……わわ、私を好きだと、くーらす、の、……ま、前で言って……私を、かーらかうように、なった。……、……えっと、理由は、……よくわからない。くくクラスの、人間は……、そーれに、わ、わ、わ、笑って、……あいつの、せいで、私は、笑いものに、……さ、さ、されてきた。……でも、……、……な、な、夏休み、の、前、……あいつは、か、か、傘のない、わーたし、雨、のとき、か、か、傘を、差しだしてきて……、自分は、……ずぶ濡れになっていた。つ、つつつ突き飛ばしても、わーたし、を、か、……傘に、いーれてきて、……、こ、こ混乱した。……その後、……、えっと、……校外学習で、も、あああいつは、道が分からなくなった私を、か、かか雷が鳴って……あーらし、みたいに、なっているとき、……か、……風邪をひいているのに、……、……、ひ、一人で、探しにきた。……お礼にと、私の、おー母さんと、……おー父さんが、か、買ってきた、くく、く、クッキーを、おいしいと、……喜んで食べた」
そうだ。あいつは私を助けようとしていた。ずっと、ずっと前から。声は震えるし、ちっとも出てこない。でもあいつのことを思い出していると、あいつに会いたい気持ちが出てきて、目頭がぎゅっと熱くなった。私は首を振って、またマイクに話を始める。
「……がっ、合唱コンクールの、……前は、私が、吐いたとき、……や、や、奴は、じ、じー分の、……パーカーで、ふ、ふふ、ふ、拭いた。わーたしの、ために、……怒って、わ、わ、私が、くくく暗い、道を、……一人で、帰ろうとすると、おーいかけてきた。……あ、あいつは、私をからかう。みんなの前で、……私を、好きだと言って、……笑いものにする。く、くー、くそ詰まんないから、お、面白くしてやると、かー、かーげで、言っているのも聞いた。えっと。……だから、は、は、腹が、立つ。し、……嫌だと思う。……でも、ああああいつは、……、あの、……私を、た、助けてくる。あいつは、め、め、めちゃくちゃだ」
あいつは、めちゃくちゃだ。よく分からない。きっと色んなことを、私に隠してる。でも。
「……でも、……、……わ、私も、……あ、あいつに対して、思うことが、……め、め、めちゃくちゃだ」
言ってから、息を吐いた。そして、また拳を握りしめ、膝をするようにして、また言葉を発する。
「あ、あーいつが、き、嫌いだ。私は。……でも、あ、あいつに、く、くーるしんで、ほしくないと、思う。……あいつが、……名前を取られるのが、い、いやだ。……でも、あ、あ、あ、あいつに、ふっ、……ふ、ふーくしゅう、してやるとも、……思わなくもない。ぐ、ぐ、ぐちゃぐちゃで、……、よ……よくわからない。ど、どーが、を、……撮ったの、も、……、……どうして、そ、そ、そ、そんなことを、しー、したのか、わ、わ分かりそうで、わわ、分からない。わーたしはあいつの、……き、……き、……気持ちを、知りたい」
私は、多分あいつについて、何も知らない。あいつについて知っていることは多分だけど、あいつが知らせたいと思ったことだけだ。だから私は知りたい。知らなきゃいけない。
「だ、だ、だからあいつは、……あいつだけ、は。……し、し、清水、てーるみちを、……、……裁くのは、処分をするのは、わわ私がいい私がする。……私は、あいつが、な、な、何をしたいのか、……わーからない。あ、あいつのことを、なな何も知らない。……、だから、きちんと知って、知ってから、わ、……わ、私はあいつに、何をするのか……き、き、き決める。……、……だから、ネットの人は、あいつに、何かしようと、……し、しなくていい。わ、わー、私がする。……、私が話を聞いて、……私が、きき、……決める。だ、だから、てーれび、も、ね、ネット、も、な、な、な、何も、し、しーなくて、いい」
だから、これ以上何もしないでほしい、祈りを込めて言ってから、私はマイクのスイッチに手を当てた。
「い、以上っ、……です」
言い終えて、急いでマイクをオフにする。額にはどっと汗が噴き出ていて、背中には汗が伝い、手はびっしょりと汗で濡れいている。大きく息を吐いていると、途端にどんどんと扉をたたく音や、安堂先生がこちらにかける声が外から響いてきた。驚いていると萩白先輩は困ったように私の肩に触れる。
「お疲れさま。君と、一緒にこうして勇気を出せたことを喜びたいところだけど……、実は放送の途中から、外ではかなり騒ぎになっているんだ。とりあえずバリケードを解いたら、私たちはお咎めみたいなものは覚悟しなきゃいけないね」
「ま、……、ま、……巻き込んで、……ご、ご、ごめんなさい」
「気にしないで、私はこの先何があろうとも、今この瞬間のことを後悔なんてしない。今私は、本当に素晴らしく、清々しい気持ちなんだ」
萩白さんは私に向かって手を差し出す。私はその手を握り、握手をする。そうして私たちは笑みを交わしてから、バリケードを外すために机へと手をかけたのだった。