職員室に行き、傘を借りようとする自分を想像して血の気が引いた。私はスマホを鞄から取り出し、天気予報のページを開く。今から四十分後に一旦雨脚が途絶えるらしい。また一時間ほどで強い雨が降るらしいけど、その間に駅について傘を買えばいい。
濡れる覚悟を決めていると、クソキラキラグループの姿が見えた。
清水照道、河野由夏らが並び、後ろを付き従うように歩く千田莉子。そしてそれらを囲うように男女のパリピみたいな連中が歩いている。
どう見ても、通行の邪魔だ。奴らの後ろを歩く吹奏楽部の女子たちは、迷惑そうに後ろでひそひそ話をしている。
このまま出くわすのも嫌だ。下駄箱の隅に移動して、そのまま下駄箱を背に隠れる。奴らは声を潜めて話すことを知らないし、どんな風に動いて、どれくらいの位置にいるのかまる分かりだ。
じっと息を殺し、クソキラキラグループが去っていくのを待つ。奴らは一歩一歩進むごとに馬鹿笑いをして中々進まない。
忌々しい気持ちで床を睨みつけていると、やがて馬鹿騒ぎの声は遠くなり、雨音にかき消されるように消えていく。
辺りはいつの間にか下校する生徒も消え、下駄箱には私や、私と同じように俯きがちに歩く生徒がまばらにいる程度だ。時間はスマホで天気を見た時から十五分以上経過している。本当にクソだ。牛歩しやがって。あんな奴らずぶ濡れになってしまえばいいのに。
溜息を吐いて、雨が弱まっていないか少し期待をしながら昇降口のほうを覗く。相変わらず雨は止む気配を見せず、降り注ぐように地面を濡らし続けていた。
本当に、このまま待ってて止むのか……?
靴を履き替え、ほんの少し昇降口を出て、空を見上げる。どこもかしこも真っ黒な空が広がっていて、明るくなっているかと思えば雷鳴が轟いている。
……このまま帰るか……?
別に今日、何か予定があるわけでもない。でもいつまでもこの学校に留まっているのも嫌だ。彷徨うように二の足を踏んでいると、つん、と肘に何かがぶつかった。振り返って広がった目の前の光景に、目を大きく見開く。
「萌歌ちゃん、なーにしてんの?」
派手なリュックを背負い、真っ青な傘を手に持った清水照道が、私の後ろに立っている。
どうしてこいつがここにいる? さっき、河野由夏たちと、帰ったはずじゃ……。
よく見ると奴の手にしている青い傘は濡れていて、その先から水が滴り小さな水たまりを作っていた。一度、戻ってきたということだろうか。何のために? 私を馬鹿にしようと、傘をある自分を見せつけようとしている?
「な、な、な、なーんで、お前が……ここに」
「萌歌ちゃん、帰ってる様子もないなーと思って。どうした? 何か困ったことあった?」
濡れる覚悟を決めていると、クソキラキラグループの姿が見えた。
清水照道、河野由夏らが並び、後ろを付き従うように歩く千田莉子。そしてそれらを囲うように男女のパリピみたいな連中が歩いている。
どう見ても、通行の邪魔だ。奴らの後ろを歩く吹奏楽部の女子たちは、迷惑そうに後ろでひそひそ話をしている。
このまま出くわすのも嫌だ。下駄箱の隅に移動して、そのまま下駄箱を背に隠れる。奴らは声を潜めて話すことを知らないし、どんな風に動いて、どれくらいの位置にいるのかまる分かりだ。
じっと息を殺し、クソキラキラグループが去っていくのを待つ。奴らは一歩一歩進むごとに馬鹿笑いをして中々進まない。
忌々しい気持ちで床を睨みつけていると、やがて馬鹿騒ぎの声は遠くなり、雨音にかき消されるように消えていく。
辺りはいつの間にか下校する生徒も消え、下駄箱には私や、私と同じように俯きがちに歩く生徒がまばらにいる程度だ。時間はスマホで天気を見た時から十五分以上経過している。本当にクソだ。牛歩しやがって。あんな奴らずぶ濡れになってしまえばいいのに。
溜息を吐いて、雨が弱まっていないか少し期待をしながら昇降口のほうを覗く。相変わらず雨は止む気配を見せず、降り注ぐように地面を濡らし続けていた。
本当に、このまま待ってて止むのか……?
靴を履き替え、ほんの少し昇降口を出て、空を見上げる。どこもかしこも真っ黒な空が広がっていて、明るくなっているかと思えば雷鳴が轟いている。
……このまま帰るか……?
別に今日、何か予定があるわけでもない。でもいつまでもこの学校に留まっているのも嫌だ。彷徨うように二の足を踏んでいると、つん、と肘に何かがぶつかった。振り返って広がった目の前の光景に、目を大きく見開く。
「萌歌ちゃん、なーにしてんの?」
派手なリュックを背負い、真っ青な傘を手に持った清水照道が、私の後ろに立っている。
どうしてこいつがここにいる? さっき、河野由夏たちと、帰ったはずじゃ……。
よく見ると奴の手にしている青い傘は濡れていて、その先から水が滴り小さな水たまりを作っていた。一度、戻ってきたということだろうか。何のために? 私を馬鹿にしようと、傘をある自分を見せつけようとしている?
「な、な、な、なーんで、お前が……ここに」
「萌歌ちゃん、帰ってる様子もないなーと思って。どうした? 何か困ったことあった?」